お知らせ
【2023/02/01】 健康メモ 膝の「切らない」治療って?
桜町病院 田野倉誠 (市報/令和5年2月号)
最近CMや広告で「膝は切らないで(手術をしないで)治す」という文言を見聞きすることがあります。これはどのような治療なのでしょうか?
膝関節が変形して痛むときの治療は、今までは①ストレッチ、筋トレ②薬③装具④ヒアルロン酸注射⑤手術という流れで行っていました。
今回話題の「切らない治療」は膝の再生医療のことで、主に上記の④と⑤の間に位置する治療です。現在の膝の再生医療は「多血小板血漿注射(PRP注射)」と呼ばれるものが主流で、これは血小板という細胞が持つ組織修復能力や痛みを起こす物質を除去する機能を利用するものです。患者さん本人の血液を採って特殊な容器で血小板のみ凝縮した薬液を作成し、それを膝関節内に注射します。効果は人によって差はありますが、7割位の方が痛みの程度が20%以上改善します。しかし注射の効果期間は半年程度で、その後は元に戻ってしまうこともあります。すなわちこの治療は傷んだ膝の組織が元通りに再生するものではなく、痛みを起こしにくい状態を一時的に保つための治療です。また医療保険がきかず、自費診療となっています。総じて、将来的にはよりよい治療に改善していくと思われますが、現時点では根治的な高い効果を期待する治療ではありません。
今も昔も膝の治療は下肢の筋トレとストレッチが第一です。また歩く時に腰を曲げずおなかに力を入れながら、歩幅を少し大きく歩くことを意識すると膝の痛みが起きにくくなるといわれています。ぜひこれらのことを意識して膝を大切にされてください。